場面緘黙トークイベントでの質問回答の続きです。(前回はこちら)



〇多人数での会話が苦手なのですが、何かコツはありますか?

 ・私もいまだに多人数での会話が苦手なので、正直あまり良いアドバイスができる気がしないのですが…;
私の場合苦手な要因として、コミュ力がない等とは別に、複数の人のスピーディーなお喋りに耳が付いていけなかったり、連続する声に疲れてしまうという聴覚の問題も関係しているんだろうなと最近思っています。
なので蚊帳の外にはなりたくないけど無理もしないように、話に全力で参加するというよりは、基本は相槌を打って聞き役に回りつつ、時たま何か質問をしたりして会話に加わる…といった意識をしています。
正直そこまで興味の持てない話題だったとしても、定期的に質問する事とかをサッと会話に差し込んで、テンポを大事に、言い方は悪いけど会話に混ざっているアピールをする…といった感じです。
あとは、ある程度会話に慣れてきてからの話なのですが、あえて自分が話題を出して話の中心になってしまった方が、話の流れも掴みやすいし主導権も握れるので、楽だったりするな…と最近は感じています。
しかしなぜ世の中の人たちは多人数で、テンポよくわいわい話せるのか不思議ですね…!


〇集団の中で意見を求められてその場で答えなくてはいけない時に意見が言えるようになるためにはどんなプロセスがありましたか?

 ・私もいまだに瞬時に言葉を考えて的確に意見するのは苦手なので、これまた参考になるかはわからないのですが…;
これについてはとにかく経験を積むこと、あとは日頃から「今自分だったらどんな意見を言うかな」と考えるようにする事で、少しずつその場でも答えられるようになっていっている気がします。
例えばTVだったり身近な誰かの会話だったりを聞いて、心の中で「私だったらこのタイミングでこの意見を言うぞ!」と意識するとか…あとは友人、家族との何気ない会話を密かに少しいつもより畏まって「意見を言い合う」という事を意識して会話してみるとか…!
それと突然意見を求められると、頭が真っ白になって考えが浮かばない事もあったりするのですが、そういう時に固まってしまうと余計言葉が出てこなくなるので、
「う~ん…」とか「頭が真っ白になってしまいました…」とか、とりあえずの言葉で繋いで時間を繋いで立て直したりもしています。(困っているのを態度に出せるとその状況にもよるけど、周りも助け舟を出しやすいと思います。)


〇モリナガさんの想像されている理想的な自分ってどういう人でしたか?
 
 ・ハキハキスムーズに会話ができて、常に笑顔で何でもテキパキこなせる人です。
不安度が常に高かった頃は、なぜか自分以外の人ほぼ全員がそういう人に見えていて…というかそれが普通の人間なんだと思っていて、そうなれない自分は努力が足りない、ダメな人間だ!と思っていました。
世の中全員がそんな人だったら怖い…!

〇発話以外でも困っている事はありますか?

・私の場合は話せるようになった今でもああ生き辛いな~ちくしょう;と思うのは、感覚・聴覚過敏による体調不良であったり、それを他の人に迷惑かけられないと思ってつい隠してしまう事ですね。
場面緘黙の要因は本当に何か一つではないので、他の人にも共通するかはわからないのですが、刺激の多い場所が苦手な方は多いと思います。
あとは以前は発話だけでなく、「自分の気持ち・意見を言う」という事そのものが苦手だったので、筆談などの会話以外のコミュニケーションを取ればいいというものではなかった事、
緘動もあったので、誰かにじっと見られている状態で何かをするのも大変だった、というあたりは周囲との認識の差で結構困りました。


〇緘黙の人は少し辛くても話すことに挑戦していった方が良いのでしょうか?

・これも高木先生への質問かもしれないのですが、専門的な知識ではなく私の個人的な経験でお答えしますね。
これについては、本人が話せなくても一生困る事のない、不自由に感じる事がなければ、無理する事はないのかなと思います。
しかし場面緘黙の人の場合は生まれつき完全に話せないわけではなく、あくまで本来は「話せる」んですよね。
なのでそれを阻害されているという事は、色んな話せない場で本来の自分の力を出せなくなっているという事です。
なので、「本来の自分の力を日常的に使えるようにする」という意味では、話せるようになる努力や勉強も必要かなと思います。
私自身、やはり日常的に話せるようになってからの方がとても生きやすくなったので。
でも私もそうでしたが、無理をして余計に精神的に追い詰められたりするパターンもあるし、周りが話せるようになれと無理強いして話せるようになれるものではない(その押しつけも辛かった)とも思います。
医者等の専門機関や他の人の手も借りつつ、自分が必要だと思えた時に自分のタイミングで挑戦する事が大事だと思います。

〇モリナガさんが人生で一番苦労したことは何ですか?

・大きな括りですが、「生きててごめんなさい」と毎日・毎時間のように思うことなく、当たり前に自分の人生を送れるような生活にたどり着く事です。
細かく言うと、話せるようになる、自分の不安の一番の元凶から離れる、生活できる最低限のお金をなんとか稼ぐ…とか色んな事が含まれているので、「一番」と言われると難しいのですが…
人間として最低限のラインに自分を持ってくるのに一番苦労した…というかやっと今ゼロに来たところだよ~…(呆然)という感じです。

〇面接が苦手です。練習をしても本番になると必ず本当の自分はこんなにダメダメで何もできないのに自分の長所を言うのが恥ずかしいという気持ちが強くなってしまい、いつも上手に受け答えができません。
どうすれば克服できますか?

・私は仕事を結構頻繁に変えてきたので、面接をしてきた回数は結構多いと思います。
そして思うのは、マジで面接は自分の良い所を取り繕って、演じてナンボだという事です。
私はなんだかんだ、高校卒業後はほぼずっと接客業をやっていて、色んなお客さんや従業員を見てきました。
人と関わっていると「この人良く堂々とそんなことが言えるな!?できるな!?」「良く今までやってこれたな!?」って位にヤバヤバの人も沢山います。
と言うと、「私もそう思われる側の人間かも…」なんて不安になりやすいタイプの人は思ってしまうかもしれないのですが、いや、そう自分の事を内省してしまう時点で貴方は全然ヤバくないしとても良い人です。
本当に犯罪の一歩手前…というかむしろ普通に捕まるのでは!?みたいな事をしでかす人だったり、ものすごく差別的な発言を当たり前にする人だったり、遅刻を繰り返してヘラヘラしてたり…そしてそんな自分の問題に自分では気づかず、むしろ自分は良い人・普通の人だと思っているという人なんてザラにいるんですよ本当に…!
性格の悪い言い方になってしまうのですが、自分の悪い所にも気が付けないそんな人達が、自分の良い所アピールをして、好きな学校だったり仕事に受かるのって滅茶苦茶腹が立ちませんか?
私は質問者様のこの短文だけでも、「自分で自分の事を振り返り、内省する事ができる」という長所を見つけました。
質問者様はきっと、そうやってすぐに自己反省をしてしまう所は自分の短所だと思っているのでは?と思いますが、面接は「いかに自分の性格を良い方に捉えて人に伝えるか」が大事なので、恥ずかしがる必要なんてないし、自分のダメだと思っている所も長所に変換して、これが私だ…!と堂々としてしまって良いと思います!
「もし仕事(学校)に受かった後で、面接の時と違うと思われたらどうしよう…?」なんて思ってしまう事もあるかもしれませんが、面接と実際の性格に差があるの何て、面接側からしたら珍しくもないし、受かってしまったらこっちのもんなので、頑張ってください…!

〇自分は場面緘黙だったんだなと思う部分が、たくさん小さい頃からあるのですが、人の話がすぐに理解できなかったり、簡単な計算も苦手だったり、適切な言葉がすぐに出てこなかったりするので、こういう所は頭が悪いのでこれは別の障害なのではと思うと、病院に行くのも怖かったりします…
だいぶ年齢もいっているので、今更障害者になるのかな…とか考えてしまい…
どうしたら良いのでしょうか。

 ・私の場合も色んな「人と同じにできない事」があって、周りと合わせなきゃ、普通にならなきゃ!と思ううちにどんどんと抑圧的になって話せなくなっていた面もあるので、(イベントでも話しましたが、ADHDの傾向があります。)質問者様も他の問題が隠れている場合もあるかもしれないな…とこの質問を拝見した限りでは思いました。
もし問題が見つかったとしても、病院に行ったことは誰にも言わないでいる事もできるし、言わなければ誰も質問者様の事を障害者という目で見たりする事はありません。
今も日常で困りごとが多いのであれば、怖がらず病院に行って見た方が自分の色々な事がわかって、これからの人生が楽になるのかな…?と思います。
私も病院に行くことが最初はとても怖かったのですが、いざ行って見たら普通の体の病院とあまり変わらないし、やはり専門家の人に診て貰えただけでもとても安心感がありました。

〇医学的な根拠とかはまだわからないかもなのですが、発達障害と緘黙は関係があるのでしょうか。

・場面緘黙の専門的な本には基本的に発達障害と場面緘黙の関係についても書かれています。(無関係とは限らないという事です。)
私から詳しく説明するのも怖いので、よろしければ本を読んでみてくださいね…!


〇同僚(場面緘黙?)と良い関係を築きたくて悩んでいます。一般企業の障碍者枠で働いています。
同僚で話せない人がいて、微かな頷きや首振り、筆談などでコミュニケーションを取っているのですが、無表情(モリナガさんの漫画にもありましたね)や「です、ます」のない筆談を、対人恐怖持ちの私はどうしても「怒ってる?」「怖い」と感じてしまいます。どうしたらよいでしょうか。

・イベントでは上手く回答できずに申し訳ありませんでした…!
(高木先生がわかりやすく説明してくださいましたね)
場面緘黙の人も対人恐怖が強い人が多い…というか私自身も、緘黙傾向が強い時代だったら、質問者様のようにその同僚の方とのやりとりで、些細な事でも「怒っちゃったかな…?」「今何考えてるんだろう?このやりとりで大丈夫かな…?」って不安でつねに張り詰めた気持ちになっていたと思います。
無表情なのはむしろ、質問者様とのやりとりに緊張しているからだったり、「です、ます」のない筆談も(この文章だけでは詳しくはわからないのであくまで想像ですが)、質問者様とフレンドリーに接したいとか、です、ますを省いて筆談のスピードを上げたい、とかプラスな意味での同僚さんの考えがあるのかもしれない…なんて思いました。(そうした他の人から見たら気が付かないような所にも何か理由があったりします。)
高木先生も仰ってましたが、きっとお互いに怖がりあってしまっている状態なのですね。
どうしたら良いか、という答えにあまりうまく答えられないのですが、とにかく同僚さんの態度は怒っての事では絶対にないと思うので、少しずつでも打ち解けられますように。


以上、トークイベントでいただいた質問回答でした。
参考になれば幸いです…!
…と思っているものの、私を長年苦しめたのは「こうあらねばいけない」という他人の意見などを鵜呑みにした思い込みだったので、
私の言葉が自分と合わないなと思ったら、無理に参考にする必要はない…っていうか、信じすぎるなよ…!!??とも思っています…!


(※それと普段はメール等で質問をいただいても基本的にはお答えできません。
(タイミングが合った時に稀にまとめて質問回答の記事をあげたりしております。)
私の今現在の精神的・金銭的・時間的余裕を考えると、場面緘黙漫画を定期的に描いて無料公開する事が私の精一杯の誰かの役に立てるかもしれない活動です。
場面緘黙の専門的な本はたくさんでていますので、場面緘黙を詳しく知りたい方はそちらをご覧いただければ幸いです。
漫画の感想・気になる事(返信はあまりできていませんが…)を送っていただいたり、お仕事の依頼をメールを頂くのは嬉しいです。ありがとうございます!)

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場面緘黙漫画書籍化しました!
WEBに載せている「かんもく少女が~」を再構成・加筆修正し、描き下ろし&日本緘黙研究会会長による解説も加えています。

よろしくお願いいたします。


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